チチチ・・・・ピチュピチュ・・・
「んん・・・・」
まどろみの中
アンジェリークは、鳥の声で目覚め
ゆっくりと起き上がった。
そこは見慣れた自分の家。
お気に入りの物と、愛する家族と一緒に住む大切な家。
窓からカーテン越しに優しい光がもれている。
けれど、あまりにも穏やか過ぎて
アンジェリークはふと不安になった。
そばにあったはずの温もりもなく――
その時
カチャリとかすかに音をたてて部屋の扉がゆっくりと開く。
「なんだ、起きてたの?」
様子を伺うようにそっと入ってきた青年を見るや
アンジェリークはベッドから降りて駆け寄り
ネグリジェのまま彼の胸に飛び込んだ。
「ど、どうしたの、アンジェリーク。
怖い夢でも・・・見た?」
そう言って、
彼が優しくアンジェリークの背中をなでるうちに
アンジェリークの心は落ち着きを取り戻し首を振った。
「ううん、そうじゃないの、マルセル。
とても懐かしい夢を見たのよ・・・
幼くて愛しい、聖地にいた頃の私たち」
「それが・・・どうかしたの?」
「ええ・・・あまりにも懐かしかったから・・・
目が覚めて・・・ちょっと・・・寂しくなったの」
そう言って、心細そうにアンジェリークがマルセルを見上げると
彼は、昔のように口を少し尖らせて言った。
「アンジェ。それってちょっとひどくない?」
「え・・・?」
「だって、僕がここにいるのに君は寂しいって言うの?」
「え!?べ、別にそういう意味じゃ・・・」
アンジェリークが慌てて弁解しようとすると、
マルセルはクスッと笑った。
「・・・なんてね。
昔の僕ならこうやってすねたんだろうなって話」
「も、もう!!マルセルったら!!」
真っ赤になって抗議するアンジェリークの手を
マルセルは捕らえて、口づけて。
彼女が脱力したころを見計らい、微笑みながら囁いた。
「ところで、お寝坊の奥さん。
朝ごはんの支度が出来たんだけど、今すぐ食べる?
それともまた、一緒に眠る?」
その甘い言葉と眼差しに
アンジェリークの頬がさらに赤く染まったのは言うまでもない。
ここが二人のSweet Home――
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